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執筆者の写真Rio

Vol#16 マルチ2世はちょっとずつ苦しい

インタビュー相手

  • インタビュー相手:20代男性

  • インタビュー時期:2023.1

  • 家族構成:父(離婚)、母、私(長男)、次男(1歳年下)

  • マルチ商法との関係:母がアムウェイ会員(8年程度)、他にドテラ、ハーバーライフの製品購入経験あり


マルチにはまった母

母は昔から色々なものにハマりやすい人でした。


母は子ども時代にお金に困窮していたことに加え、親ともそりが合わず18歳頃に家を出ていました。

貧困に対するコンプレックスのようなものがあり、不労所得に憧れていたように思います。


母は父とは私が小さい頃に離婚しているのですが、その父に聞く限りでは、私が産まれる前からハーバーライフの製品にハマっていたようです。


そして、私が中学2年生の頃アムウェイ会員になりました。


母には当時数年付き合っていた彼氏がいました。

私たち子どもを含め彼氏の家に居候させてもらっていたのですが、喧嘩別れをし孤立。


生活保護も受給していてお金に困窮していたこともあり、新しい働き口を探していました。

そんなとき年下の男性から誘われて会員になりました。


中学3年生の頃、会合に弟と連れられました。


そこでは、ダイアモンド会員がバイオリンを演奏しコンサートを行い、エメラルド会員が商品の宣伝を行い、各種対談もあったと記憶しています。



母の活動状況

勧誘するあてがあまりないこともあり、あまり勧誘していなかったように思います。


ただ、週1回程度セミナーやミーティングに行っていました。


製品では生活用品の定期便や、たまに大型家電を購入していました。

(鍋セット×2、空気清浄機×2、IH、サプリメント、シャンプー、ごま油、醤油など)


今でも毎晩のように中島薫のYouTubeを聞いています。


それ以外にもドテラの製品も購入しています。


アロマオイルを飲むのが健康にいいと信じ込んでいるようで、水に混ぜて飲むこともあります。



マルチ2世として自覚が芽生えたとき

元々は母もそれほど勧誘もしていなかったですし、製品を使うぐらいなら良いと思っていました。


母からサプリメントも執拗に勧められ、断るたび喧嘩することに疲れたので、諦めて持ち歩いていました。


2世としての自覚が芽生えたのは2022年です。


現在付き合っている彼女の元カレがアムウェイ会員だったこともあり、彼女から話を聞いて気にするようになりました。


ちょうどその頃宗教2世問題が沸き上がり、加えて映画「星の子」やズュータンさんの著書を通して考えが少しずつ変わってきました。


元々母の性格から何事にもハマりやすかったので、マルチによって豹変したというイメージはありません。


しかし色々調べる中で、

母もマインドコントロールされたのかもしれない、

自身の辛さは2世特有のものなのかもしれない、

と感じるようになりました。


映画星の子で類似していると感じたのは、大きく3点です。


1点目:スピリチュアルを本気で信じている

星の子の中では、波動を込めた水を浸したタオルを頭の上に乗せる、普通の水を高額で買うなどが表現されていました。


母はスピリチュアルなことも信じているので、20-30万円ほどかかるスクールに通ったりもしています。


また、塩に波動を込めたと言って常に持ち歩いており、ファミレスなどでも持参した塩をかけて食べています。


他にも、私に「陰気がある」などと言って霧吹きで水をかけてくることもあります。


そのようなこともあり、現在では占い師として仕事をしています。


2点目:親のことを口や心では拒絶しながらも生活では受け入れている自己矛盾

私は、母が度々セミナーの話をしてきたり、マルチ会員になるように勧めてきたりするのが嫌です。


母からは「将来アムウェイで稼いでくれるのが私の夢だ」と言われています。


私はマルチ商法に対して学校から教えられた限り悪いイメージしかありません。


やっている母はあり得ないと思っているにも関わらず、サプリメントは渡されたら飲んでしまいますし、鍋も使っています。


そこに矛盾を感じて辛かったです。


何でもかんでもアムウェイの話題にすり替えられていくのも辛いです。


しんどいというとアムウェイのサプリメントを飲めと言われる。

花粉症の話をすると空気清浄機の話をされる。


母は話を聞いてくれているようで聞いていない。


会話をしたいのにアムウェイの宣伝に繋げられるのがしんどかった。


それが続くと話す気が起こらなくなり、話しても無駄だと思ってしまいます。


3点目:周りに言えない

同じような経験がある人には言えますが、そうでない人にはこの話ができません。


昔から、母は周りからなんだかおかしな人と勘づかれていました。


しかし、その根底にはマルチ商法があるとバレるわけにはいかないと思っていました。


「マルチやるやつありえないよな」と友人との間で話にあがると、自分もそう思うと言い、隠し通さないといけないという緊張感を常に抱えていました。


ママ友を勧誘されたり、スピリチュアルな行動を取られたりすると困るので、学校で懇談会があるときに教えなかったですし、参観日にも来てほしくなかったです。


最近にも、母のことを冗談交じりに友人に話していると「お母さんマルチにひっかかっていない?」と心配そうに聞かれました。


「ああ、この子たちは“まともだからこそ”、それとは違う自分の家庭のことは絶対に話せないな。」と思いました。

同情されたくないので隠していました。


元々は、親だけの問題だと思っていました。


親とそりが合わないから辛いと思っていたのですが、ようやく最近2世の辛さだったんだと理解できるようになりました。


そんなこともあり高校生の頃までは全く周囲へ話したことがありませんでしたが、最近ようやく彼女や先生、助けてくれる大人に話すようになりました。


離婚した父とも定期的に会ってはいましたが、最近になって初めてマルチ商法について話をして、実は母が過去からマルチ商法にハマっていたことを知りました。


敢えて言うほどのことではないと、特に話題にしてきていませんでした。


母方の祖母もいますが、母と祖母の関係はよくありません。


マルチ商法については親族全員が諦めているような状況です。



金銭面でも苦しいです。


現在私と弟で月15万円ほどの奨学金を借りており、全額母に渡してきました。

母の本業と併せると月30万円ほどの収入がありますが、生活は苦しいです。


貯金はなく、様々な給付金などで毎月自転車操業の状況です。


奨学金は私たちの生活費だと思って納得していましたが、聞くとスピリチュアルに関連したスクールのローン返済やアムウェイ製品購入に使っていることが分かりました。


母のやり繰りできる範囲でなら良いと思っていましたが、どうやらそれでは済んでいないらしいことが最近ようやく分かってきました。


なお、私の学費は自分のバイト代で賄っていますし、弟の学費は祖母がお金を貸していました。



最後に

最近よく見る宗教2世問題に比べると、マルチ2世の場合は生活にそこまで介入されていないような気がしています。


マルチ2世の抱える課題は少しマシなのではと感じる部分もあり、辛いと声を大にして言うことを遠慮してしまう気持ちがあります。


ただし、自分の苦しみは嘘ではなかったですし、虐待のように目に見えた地獄ではないものの、常にちょっとずつ苦しい、それも地獄だと思っています。


そんな辛さを辛いと言える場があっても良いのではと思っています。


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