Vol#0 母がA社にハマった30年。離婚・絶縁・借金により家庭は崩壊した
更新日:5月18日
プロフィール
マルチ被害をなくす会を運営しています、Rio(ライオ)と申します。
母が現役のマルチ商法販売員(歴30年以上)です。
Rio(30代男性)
マルチ商法との関係:母が現役会員(30年程度)
会社(A社):日用品など幅広く提供。立ち上げから30年以上
その他、家族構成は下図参照

母がマルチ会員に
母が入会したきっかけは、あまりに昔のことで親族誰も覚えていません。
父のメモによると、私は生まれていない頃。
アップMと知り合い「自分のお小遣いで少しだけ買って良いか?」と聞かれて、父は了承したそうです。
私が小さかった頃は、私から見える限りマルチによる被害は特段記憶にありません。
小学生の頃は、周りの友達を一斉に家に集めて誕生パーティーを行ったり、毎年1回は家族旅行に行ったり。そんな幸せな家庭でした。
様子に変化が見られたのは、会員になって10年ほど経った私が小学校高学年の頃。
母は祖父母も暮らせるような2世帯住宅に住みたい、と夢を語るようになり、数千万円する新居を多額のローンを組んで建てることになりました。
この頃からしきりに
北海道へ旅行に連れて行ってあげる
海外旅行へ連れて行ってあげる
などと言われるようになりました。
新居も旅行の話にもワクワクしていました。
※マルチ商法に関する話を聞くようになって思うのは、母も夢を語るよう言われていたのだろうと想像します
新居への入居後母はA社の海外本社へ視察に行き、そこからマルチ商法にのめりこんでいきます。
引っ越し作業で身体を痛めたことで、労働せず収入を得ることに希望を抱いたのも背景の1つです。
家の中の製品はほとんどがA社製品になりました。
浄水器・空気清浄機・鍋・サプリメント・調味料・洗剤などなど。
親族に関して最初にトラブルになったのは父および姑です。
ここからは父に聞いた話ですが、母は空気清浄機2台を姑に贈りたいと言い出しました。
しかし父に反対され姑に断られ、相当不満に思っていたそうです。
母は姑の悪口を頻繁に言うようになりました。
その後、父にもA社ビジネスを一緒に手伝うようにお願いし、2人で一緒に毎週水曜日夜20-23時頃まで、ミーティングに参加するようになりました。
家でもデモンストレーションやマーケティングの練習、土日は父の仕事のお客さまのところへ足を運び、来月の目標設定はいくらにするの?等と話があったそうです。
さらに追い打ちをかけるように父の勤め先が経営破綻しました。
マルチ商法による不仲も相まって両親は喧嘩の毎日。子どもながらに両親の離婚は時間の問題だと思っていました。
学生時代
昨今の旧統一教会の問題を受けてカルト宗教2世の被害が取り上げられているので、マルチ商法2世の身として、子どもの頃に辛かったことを少し記憶にたどらせて書いてみます。
①毎食のサプリメント、プロテイン
これがおいしくありませんでした。
いつも嗚咽をしながら飲んでいました。
他のきょうだいが飲みたくなくて隠れて捨てていたこともありましたが、見つかって母から怒鳴られている様子も見てきたので、私は反発もしませんでした。
②食事
鍋のセットで料理は基本的に賄えるという謳い文句なので、ご飯も鍋で炊いていました。
炊飯器はなく、電子レンジも使わなかったため(電磁波が身体に悪いという話を信用してだと思います。私が大学生の頃、使っていた電子レンジを無理矢理実家に置いたこともありましたが使ってもらえませんでした)、鍋で炊いたご飯が冷めてしまった後は、冷たいご飯か、鍋で炒め直したご飯を食べていました(焦げやすいんですよ)。
私は炒めたご飯ではなく温かい普通の白いご飯を食べたかったです。
③金銭
本当にお金がなかったので、お小遣いは家を購入した後はありませんでした。
基本的に物はきょうだいのお下がり。
部活のグッズも友人にもらったものを使っていました。少し惨めだったかなぐらいです。
親から買ってもらったものは本当に記憶に残っているのですが、中学生以降では野球のバットと正月の集まりで無理矢理買わされたジャンパーぐらい。
家族での外食は皆無でした。
一方で習い事は沢山していたこともあり、必要なお金は出してもらっていました。
ちなみに母は私の友人の親や習い事の先生も勧誘していました。
ただし、その結果私が誰かと仲が悪くなることは私の記憶の範囲では特にありませんでした。
―――
この状況をどう捉えるかはお読みいただいた方に委ねます。
私の話は20年ほど前の話です。
母は本業もありましたしそこまで近所で評判が悪かったわけではなかったので、周りの勧誘された方も母のマルチに関してはね…、というぐらいの大人な反応をしてくれていたのではないかと思います。
私自身が苦しかったのは成人後なので、子どもの頃どれだけ苦しんでいたかと言われると少し疑問符がつきます。
加えて、末っ子だった私の目から見える範囲です。
後にも出てきますが、姉は姉で全然違った見え方をしています。
その人の健康状態や、続柄や性別、会員との関係性などによっても見え方は全然違いますし苦労も異なります。
何故ここでコメントしたかというと、他の方へのインタビューを通しても親族の中で特定の方が苦しむことが多いと感じているからです。
(親族に対してさえもあまり話せていない方も多くいらっしゃいます)
もしかしたら同じマルチ会員の親族の中で特定の人に負担がいっているかもしれない、そう思って少しでも親族の間で話してもらえると、自分が知らない事実が出てくるやもしれません。
救われる親族が出てくるかもしれません。
そんなことを願っているため、私以外の親族の関係も含めて私はまとめることを心がけています。
マルチ商法は成人以上が会員になれるため、カルト宗教で見られる幼い頃からの被害とは少しばかり異なると考えています。
もちろん幼い頃から被害を受けている方もいますので、あくまで一例として見てください。
色々な方の証言を集めたいと思っています。
そもそもマルチ商法2世の方の詳細な被害事例はほとんど語られていないため、比較ができず客観視ができないことも背景にあると思います。
(参考:マルチ商法2世記事)
―――
話が脱線してしまいました。
そんな中、高校受験を控えていた私は母から勧められ祖父母の家の近くの高校に通うことに。
祖父母のことは大好きでしたし、学区の面でも良かったこと、家族のいざこざから離れられることから、3年間は祖父母の自宅から通うことにしました。
高校3年間、その間もさらに泥沼になっていた両親の状況を耳にすることなく、祖父母の愛情を一心に受けて育ちました。
高額な塾の費用を祖父母に出してもらい、愛され、大切に育ててもらいました。
この時間がなければ今の私はありません。祖父母には一生感謝しています。
ちなみに同時期には姉と兄もそれぞれ実家と距離を取りながら生活をしていました。
そして末っ子だった私が大学に入学し学費の目途も見えたことから、両親は離婚しました。
家庭裁判所での裁判に加え探偵に依頼するなど、色々ありました。
離婚の原因は、マルチによる不仲およびそれをきっかけとした不倫です。
子どもたちは母に引き取られ、家のローンは母が継続的に支払うことになりました。
マルチに関しては、浄水器などの製品を1人暮らしの家に持っていかされました。
フィルターの交換費用は高額ですし、1人暮らしのキッチンに置くにはスペースが狭すぎるためほぼ使っていませんでした。