プロフィール
インタビュー相手:Tさん(50代男性)
インタビュー時期:2022.9
マルチ商法との関係:配偶者が会員(20年以上)
被害内容
マルチ商法にハマった人の多くが根拠のない栄養や健康に関する情報やニセ医学、陰謀論のようなものを信じて吹聴したり実践したりしているのではないでしょうか。
私の妻も現在もそうです。
当初、妻は栄養や健康についての勉強を始めたと言っていました。
当時子供も小さかったですし母親が栄養や健康の知識を得ることはいいことだと思っていました。
しかし実際は、ミキプルーンの販売員を始めていました。
妻の言う栄養や健康の勉強とは、大半は「○○は毒」とか「○○が体を壊す」というもの。
本やコピーされた資料を一生懸命読んだり、話を聴くためにセミナーに出掛けたり。毎日のように私や子供にそんな話をするようになりました。
マルチ商法の会社の目的は、いわゆるトンデモのような情報を信じ込ませて「だからこの健康食品を摂らないといけないんです」と言って製品を売ることなのでしょうが、そのようなやり方は時に問題を引き起こすものだと思います。
少し昔の話にはなりますが、今回は私にとってその最たる事例を一つご紹介させていただきたいと思います。
ある時、私は体調があまり良くなくて病院で検査をすることにしました。
そこで告げられた病名を聞いて私は愕然としました。
すぐに入院をすることになり治療を始めましたが病気がかなり進んでいて決定的な治療の効果が得られませんでした。
そこで最後の手段として、強い薬を併用する治療方法を選択するしかありませんでした。
体への負担は大きく肝機能に影響が出るなど苦しい治療になりました。
その頃妻は「医者の薬を止めてミキシェイクを飲めば体が元気になって、病気も治る」と私を説得するようになりました。
当初は何をバカなこと言ってるんだ?と思い、その話はあまり相手にしませんでしたがしつこく言ってくるのでとても違和感を覚えました。
妻は何かおかしくなったのだろうか?
家の中や子供たちはどうなっているんだろうか?
ただでさえ病気で辛いのに、なぜこんなことで悩まなければいけないのだろうか?
と、とても辛い思いでした。
その時は、病気の悩みよりむしろ妻の異常な言動に対する悩みのほうが大きかったかもしれません。
妻の説得はどんどんエスカレートし、もうその話しかしないようになりました。
入院中ですから、私は「子供たちはどうしてる?」とか少し気の休まるような話をしたかったのですが、
「私の話を聞きなさい!」とまるで睨みつけるような顔で何度も説得されました。
マーカーが引かれた資料を私に突きつけ、これを見なさいと言って説得してくるので、これは誰かにそうするよう言われているんだなと感じました。
入院中ですから必要なものを持ってきてもらうなど妻には世話にならなければいけない状況でもありますし、飲むと言わなければ収まりが付かない状況でした。
栄養を摂ること自体は体に良いことなので、薬は止めないがミキシェイクは飲むことで、妻にはしぶしぶ了解してもらいました。
妻は早速ミキプルーン製品をケース単位で大量に病室に持ち込んできました。
そして、体を良くするために大量に飲むように私に言い、製品の減り具合をチェックしていました。
私も栄養を摂って少しでも身体を元気にできたらいいなという気持ちはありましたので当初は言われた量を飲んでいました。
しかし今になって考えるといくら肝臓を良くするためにタンパク質が必要だからと言って病気や薬の副作用で体が弱っていてしかも一日中ほとんど寝ていて動かないのに大量のプロテインなど飲んだら体に良いわけがありません。
胃の中がドロドロのプロテインでいっぱいのような感覚でとても苦しくなりました。
医者が腎臓の検査数値がおかしくなったと不思議そうにしていました。
あまりにきつくてとても続けられなくて、飲んだふりして捨てればいいかとも思ったのですが高価なものなのでそれはやめて、普通の量で飲ませてほしいと妻に一時間ほど懇願ししぶしぶ了解してもらいました。
なぜこれほどお願いしなければいけないのかと思いました。
幸いながら最終手段の治療方法が効いて病気は良くなり退院することができました。
今考えても、生死がかかっている時に治療妨害されたとしか思えません。
妻が私を説得していた頃、医者も「自分は医者としてできる処置はした。治らなくても自分のせいではない」と言い始めており、私が弱気になって妻を頼って言うことを聞いていたら99%以上の確率で死んでしまってここにいなかったと思います。
退院直後、今回は書きませんがミキプルーンに関する別のことで私が激怒しミキシェイクを飲むのはキッパリと止めました。
それで体力が落ちたとか、健康上問題があったとかは一切ありませんでした。
通常、CM等でも、サプリメントや健康食品は適量を摂って利用するよう促すではないですか。
健康食品を販売する立場の人間が大量に飲めと言うのは間違っている。
しかもミキシェイクを飲めば病気が治るなど言うのは薬機法に照らしてもおかしい。
健康食品の販売員として完全にダメ、ミキプルーンの販売員というのはそんな人たちなのかと思います。
数年前、「ミキプルーン被害」などと検索していると「入院したらミキプルーンの販売員の親戚が薬を止めてミキシェイクを飲むようしつこく言うのでとても困った」という私と全く同じ事例が報告されているのを見つけました。
私の妻がたまたまそういう行動をしたのではなくて他のミキプルーン会員も同じことをしていることが分かりました。
私には妻が自分一人で考え、資料を探しコピーしてマーカーを引いて私を説得したとはとうてい思えません。妻はそういうタイプの人では全くありません。
必ず後ろにそうするように妻に仕向けた人間がいるはずです。
私を殺していたかもしれないその見えない悪魔のような存在に今でも大変な憎しみの気持ちを抱いています。
この件については、何度も妻と話をしてきました。
私はその薬品や治療方法ができる前後の死亡者数とか死亡率などを根拠として「あの時薬を止めたら死んでいたよね」と考え方を改めてくれるように問いかけましたが、妻は「いや、治った」と言い張り断固として認めません。
確かに、例えば末期がんのような人が治療を止めて自然派な生活をして治ったなどという話は世の中にあります。
しかし、そんな話は奇跡的な確率でそれよりはるかに多くの人が命を落としている現実があります。
妻はそういった根拠を無視してただ言い張るだけです。
また、妻は「あなたのことを思ってしたことだ」と主張します。
私のことを思ってしてくれたのはありがたいことは理解します。
私は薬を止めろと言って私を殺していたかもしれないことを責めているのではありません。
誰でも良かれと思ってしたことが間違いだったことはあり得ます。
そうしたら間違いを認めて考え方や行動を改めませんかと問いかけているのですが全く受け入れようとはしてもらえません。
私もそれほど人間ができているわけではありませんので、話し合いといっても口論みたいになってしまうとこも多く手紙でやり取りすることにしましたが未だにまともな返事をもらったことがありません。
最近では「そんなことを言った覚えがない」「記憶にありません」みたいな返事しか来ませんので手紙も止めました。
ミキプルーンに関する妻と私の問題はこの件以外にも多々ありますが全てがこんな感じで話し合いをして解決することは全くありませんでした。
ミキプルーンの事で何年もずっと妻とこんな状態が続いているのはずっと辛く寂しい気持ちでした。
子供たちにも嫌な思いをさせてきてしまったのだろうなと思うと申し訳ない気持ちで胸が痛いです。
ミキプルーンさえこの世になかったらもっとずっと楽しい人生なんだろうなと思います。
当然ですが、ずっとこのような状態にしておくわけにはいかない、なんとかしなければいけないと思っています。
何年か前に被害者の会みたいなものをネットで検索したのですが見つけることはできませんでした。
また公的なお悩み相談を利用してそこから弁護士の無料相談を受けたこともありました。
私の本当の目的は、妻がどうのこうのというよりも妻の後ろにいる連中をぶっ潰したいということでした。
そのため訴訟ができるようなことでもあれば費用がかかってもするつもりでいました。
勝訴する必要などない、「あの人たちは訴訟を起こされている」そういう事実をつくるだけでも十分だと思っていました。
それをもとに、妻が最初に勧誘された幼稚園の父母会に対して注意喚起をしてもらうとか、そんなことから行動を起こしていきたいと思っていました。
しかしそんな話も弁護士には「家庭内の問題だから・・・」と全然相手にされませんでした。
自分一人で何かしようとしても何もできずにずっともがいていました。
何も解決策が見つからないまま時間が過ぎて、Twitterで毒を吐くと反応してくれる人がいて、そんなことくらいしかできていませんでした。
最近になってたまたまズュータンさんの本を知り、読んで強く共感しました。
そしてマルチ商法の実態や周囲の人が被るトラブルについて少し理解できました。
最近ではもう離婚しかないのかなと思っていましたが、妻がミキプルーンを始める前まではこの人と結婚して本当に良かったと思っていたことも思い出しました。
また最近テレビで統一協会やマインドコントロールについて取り上げているのを見てマルチ商法にも通ずるところがあると感じました。
いくら正論で諭して説得しようとしたところでダメだったんだ、それどころか逆効果だったかもしれないと知りました。
また、どうせ稼げないのだからそのうちやめるだろうと思っていましたが稼げなくてもマルチ商法はやめないんだということもわかりました。
簡単に解決できるものではないですし時間はかかるかもしれないですが、それでも真摯に取り組んで行かなければならないと思いました。
今回Rio さん達の活動を知り私も協力させていただきながら私自身も解決策を見つけることができるようにしたいと思っています。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
私の場合まだ現在も継続中で私もこんな状態ですので何か解決策を提供するような内容ではありませんが、マルチ商法にまつわる問題として何かの参考にでもしていただけたら幸いに存じます。
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