Vol#4 私は一切稼げなかった。辞めたくても辞められない会員の方へ
更新日:2022年10月14日
このような方にオススメ
お子さまが会員の方 →親御さまとしての関わり方の参考になれば
恋人・配偶者が会員の方 →洗脳を解くためのヒントとして参考になれば
収入が得られない現役会員の方 →今の活動に対し考えるきっかけになれば
プロフィール
インタビュー相手:みるさん(30代女性)
インタビュー時期:2022.5
マルチ商法との関係:元会員(会員歴:5年、その期間収入は0)
会社(U社):健康食品などを取り扱う。立ち上げから10年以上
マルチ商法を始めたきっかけ
私は昔から自己肯定感が低く、いじめられっ子だった。
友達はいたが、いじられキャラで対等に扱ってもらえないことも多く、人間関係に悩んでいた。
両親は味方してくれたが、心配をかけたくないとの思いや、「そんなことで、いつまでもうじうじ悩まないの!」と叱られたりして、次第に話せなくなっていった。
そんな状況から、いつかすごい自分になって周囲を見返したいという思いがあった。
社会人になったら活躍したいと思ったが、就職した会社で上司に目をつけられ、パワハラのような扱いを受け、心を病む。
心療内科に通い抗不安薬を服用し、SNSでも「死にたい」とよく書き込んでいた。
ある日、投稿を見た知人エミカ(仮名)が、「大丈夫?」と連絡をくれた。
エミカは、明るくハッキリものを言う女性で、私は彼女に少し憧れていた。
エミカと食事に行った際、エナジードリンクの製品サンプルを勧められる。気に入って、その後自ら購入したいと申し出た。
エミカからは「会員制の通販の製品なんだよね。私が代わりに買っとくから後でお金貰っていい?」と言われた。
その後、健康セミナーや人生が変わるセミナーなどの誘いを受けるようになり、断っても「定期的にあるから、また誘うね」と何度も連絡が来た。
うさんくさそうと思いながらも、「人生が変わる」というセミナーに少しだけ魅力を感じ、参加。
そのセミナーは、当時の私が求めていた、楽しく、否定のない、温かい雰囲気だった。
私は、この環境にまた来たいと強く感じた。それがマルチ商法の入口とも知らずに。
セミナー後、同じくマルチをやっているエミカの両親と、リーダー会員のキヨコさん(仮名)という女性を紹介される。
キヨコさんは、私の悩みに対して親や上司などとは違う目線でアドバイスをくれた。
キヨコさんは、私のことを理解して肯定してくれる…!
そう思った私は、一気にキヨコさんのファンになった。
会員登録
その後、エミカとキヨコさんと3人で会い、「製品も気に入っているみたいだし、登録してみたら?」ともちかけられ、何となく会員登録をした。
その後、参加したセミナーの中で、よくあるマルチの組織図が出て来て「ここって、そういう会社なの…!?」と絶句。
一時はエミカたちと距離をおいたが、「エミカやキヨコさんにまた会いたい、彼女たちみたいになりたい」と思い、再び繋がるようになった。
マルチ会員はみな肯定的なことを言い、とても友好的に接してくれたので、居心地が良かった。
また、大人しい雰囲気だった女性会員が、昇格していくごとに強くかっこよく変貌を遂げて「あなたもできます!」と声高々にスピーチする姿を見て感銘を受けた。
「私も輝けるならやりたい!」と、本業と並行してマルチ商法に取り組み、足しげくセミナーやイベントに通い、使う製品を増やしていった。
周りからの反応と、思ったこと
ビジネスの話やサプリのことを伝えると、ほとんどの友人たちに心配され、怒られたりもした。
大の親友には「友達を売る気!?」と言われた。
高校以来月1回会っていた友達とは、一切連絡がとれなくなった。
私は、そんな反対の声をあげたり遠ざかっていく人たちに、
「みんなわかってない。私のことを理解してくれない、話をちゃんときいてくれない人とはもう関わりたくない」
と、心を閉ざした。
会員に相談すると
「その程度の縁だったんだよ」「みるが変わったから、皆ついてこれないんだよ」
などと言われた。
身内では、母が大反対し大激怒。
製品を投げつけ踏みつけながら、怒鳴られたこともある。
「今すぐやめなさい!」
「詐欺の片棒をかついでいる」
「最近、表情が気持ち悪いよ!マルチ商法のせいだ!」
と何度も言われた。
私は、
「製品もいいものだし、会員もみないい人。使ってもない、会ってもいないのに悪く言わないで。みんな綺麗になったと言ってくれる!お母さんの目がおかしい!」
などと母に反抗していた。
その後私に彼氏ができた。
マルチ商法をやっていることを打ち明けたところ、
「好きなことならいいんじゃない」と認めてくれた。
しかし、その後エミカやキヨコさんたちにも会ってもらうとそこから一変し、
「あの人たち、俺は好きじゃない。やっぱり、マルチ商法は辞めて欲しい。」
と言われるようになった。
サプリを勧めても「そういうの好きじゃない」と断られた。
エミカの彼氏は、ビジネスはやらないがセミナーに何度か来て製品を飲んでいるのを知っていたので、
「私も彼と別れて、マルチを理解してくれる人と付き合おうかな」と考えたこともあった。
しかし結局、彼とは交際を続けた。
何故かというと、二人で過ごしていると楽しくてずっと笑っていたから。
当時は誰にも言えなかったが、正直マルチの環境にいるより何倍も楽しかった。
現在、夫となった彼に当時なぜ私と別れなかったのか、別れようと思ったことはあるかを改めて聞いてみると
「考えたことはあるけど、みるは変わってくれる、マルチを辞めてくれると信じていたから」と言ってくれた。
辞めるきっかけ
マルチの集まりでは、最初はありのままで受け入れられている気がしていたが、
次第に「成功したいなら、もっと成功者っぽく振る舞いなよ」
などと指摘されるようになり、息苦しい場面もあった。
マルチ商法を始めて約5年、私は4つほどのきっかけで辞めたいと思うようになった。
①借金
ビジネス会員どころか愛用者会員も一向にできなかった私は、もちろん収入ゼロ。
完全な赤字状態で、私生活にまで影響があった。
反対する母から逃げるため、マルチ商法を始めてしばらくしてから、私は一人暮らしをしていた。
マルチでの給料はゼロのため、本業の給料日前は 残金が数百円、もやしと100gのひき肉、激安カップラーメンで飢えをしのいだこともあった。
掛かっていた費用は
毎月の定期購入(収入を得るための絶対条件)
製品の買い込み
勧誘時の交通費、お茶、食事代
化粧品販促のためのエステ資格取得&化粧品買い込み
毎月のセミナーイベント参加費
海外イベント参加費 など
貯金を全額使い果たし、「成功すればすぐ返せる!」とリボ払いやキャッシングを繰り返し、借金は約150万円になっていた。
貯金分も考えると、約250万円ほどマルチに費やしていた。(当時の私に、バカ者!と一喝したい)
断ればいいのに、と普通なら考えるが、以下の理由が散財に拍車をかけた。
②先輩会員からの圧力や誘導への疑念
マルチ界隈では、新製品が出ると、サンプル分や小売り分として、余分に購入するのが定番となっている。
「U社のものだから間違いない!」と、試したわけでもないのに、製品を10個以上爆買いする人も。
私が購入をためらっていると、先輩会員から
「これからできるメンバーの分も買っておいてあげないと。今回の新製品は、成功のためのチケットなんだから。」
と言われた。
他にも、
仕事を理由にセミナーやイベントに参加できないと伝えると、
「体調悪いとか、身内が、とか言えばいい。それで休ませてくれない会社なんか辞めたら?」
海外イベントへ行くのにお金がないと言うと、
「イベント参加は先行投資。成功すれば取り返せる。できる方向から考えないと」
などと言われた。
ちょっとやめておこうと思っても、製品を余分に買うことも、イベントへの参加も
「成功のために必要」とあの手この手で諭される。