このような方にオススメ
お子さまが会員の方 →親御さまとしての関わり方の参考になれば
恋人・配偶者が会員の方 →洗脳を解くためのヒントとして参考になれば
収入が得られない現役会員の方 →今の活動に対し考えるきっかけになれば
プロフィール
インタビュー相手:みるさん(30代女性)
インタビュー時期:2022.5
マルチ商法との関係:元会員(会員歴:5年、その期間収入は0)
会社(U社):健康食品などを取り扱う。立ち上げから10年以上
マルチ商法を始めたきっかけ
私は昔から自己肯定感が低く、いじめられっ子だった。
友達はいたが、いじられキャラで対等に扱ってもらえないことも多く、人間関係に悩んでいた。
両親は味方してくれたが、心配をかけたくないとの思いや、「そんなことで、いつまでもうじうじ悩まないの!」と叱られたりして、次第に話せなくなっていった。
そんな状況から、いつかすごい自分になって周囲を見返したいという思いがあった。
社会人になったら活躍したいと思ったが、就職した会社で上司に目をつけられ、パワハラのような扱いを受け、心を病む。
心療内科に通い抗不安薬を服用し、SNSでも「死にたい」とよく書き込んでいた。
ある日、投稿を見た知人エミカ(仮名)が、「大丈夫?」と連絡をくれた。
エミカは、明るくハッキリものを言う女性で、私は彼女に少し憧れていた。
エミカと食事に行った際、エナジードリンクの製品サンプルを勧められる。気に入って、その後自ら購入したいと申し出た。
エミカからは「会員制の通販の製品なんだよね。私が代わりに買っとくから後でお金貰っていい?」と言われた。
その後、健康セミナーや人生が変わるセミナーなどの誘いを受けるようになり、断っても「定期的にあるから、また誘うね」と何度も連絡が来た。
うさんくさそうと思いながらも、「人生が変わる」というセミナーに少しだけ魅力を感じ、参加。
そのセミナーは、当時の私が求めていた、楽しく、否定のない、温かい雰囲気だった。
私は、この環境にまた来たいと強く感じた。それがマルチ商法の入口とも知らずに。
セミナー後、同じくマルチをやっているエミカの両親と、リーダー会員のキヨコさん(仮名)という女性を紹介される。
キヨコさんは、私の悩みに対して親や上司などとは違う目線でアドバイスをくれた。
キヨコさんは、私のことを理解して肯定してくれる…!
そう思った私は、一気にキヨコさんのファンになった。
会員登録
その後、エミカとキヨコさんと3人で会い、「製品も気に入っているみたいだし、登録してみたら?」ともちかけられ、何となく会員登録をした。
その後、参加したセミナーの中で、よくあるマルチの組織図が出て来て「ここって、そういう会社なの…!?」と絶句。
一時はエミカたちと距離をおいたが、「エミカやキヨコさんにまた会いたい、彼女たちみたいになりたい」と思い、再び繋がるようになった。
マルチ会員はみな肯定的なことを言い、とても友好的に接してくれたので、居心地が良かった。
また、大人しい雰囲気だった女性会員が、昇格していくごとに強くかっこよく変貌を遂げて「あなたもできます!」と声高々にスピーチする姿を見て感銘を受けた。
「私も輝けるならやりたい!」と、本業と並行してマルチ商法に取り組み、足しげくセミナーやイベントに通い、使う製品を増やしていった。
周りからの反応と、思ったこと
ビジネスの話やサプリのことを伝えると、ほとんどの友人たちに心配され、怒られたりもした。
大の親友には「友達を売る気!?」と言われた。
高校以来月1回会っていた友達とは、一切連絡がとれなくなった。
私は、そんな反対の声をあげたり遠ざかっていく人たちに、
「みんなわかってない。私のことを理解してくれない、話をちゃんときいてくれない人とはもう関わりたくない」
と、心を閉ざした。
会員に相談すると
「その程度の縁だったんだよ」「みるが変わったから、皆ついてこれないんだよ」
などと言われた。
身内では、母が大反対し大激怒。
製品を投げつけ踏みつけながら、怒鳴られたこともある。
「今すぐやめなさい!」
「詐欺の片棒をかついでいる」
「最近、表情が気持ち悪いよ!マルチ商法のせいだ!」
と何度も言われた。
私は、
「製品もいいものだし、会員もみないい人。使ってもない、会ってもいないのに悪く言わないで。みんな綺麗になったと言ってくれる!お母さんの目がおかしい!」
などと母に反抗していた。
その後私に彼氏ができた。
マルチ商法をやっていることを打ち明けたところ、
「好きなことならいいんじゃない」と認めてくれた。
しかし、その後エミカやキヨコさんたちにも会ってもらうとそこから一変し、
「あの人たち、俺は好きじゃない。やっぱり、マルチ商法は辞めて欲しい。」
と言われるようになった。
サプリを勧めても「そういうの好きじゃない」と断られた。
エミカの彼氏は、ビジネスはやらないがセミナーに何度か来て製品を飲んでいるのを知っていたので、
「私も彼と別れて、マルチを理解してくれる人と付き合おうかな」と考えたこともあった。
しかし結局、彼とは交際を続けた。
何故かというと、二人で過ごしていると楽しくてずっと笑っていたから。
当時は誰にも言えなかったが、正直マルチの環境にいるより何倍も楽しかった。
現在、夫となった彼に当時なぜ私と別れなかったのか、別れようと思ったことはあるかを改めて聞いてみると
「考えたことはあるけど、みるは変わってくれる、マルチを辞めてくれると信じていたから」と言ってくれた。
辞めるきっかけ
マルチの集まりでは、最初はありのままで受け入れられている気がしていたが、
次第に「成功したいなら、もっと成功者っぽく振る舞いなよ」
などと指摘されるようになり、息苦しい場面もあった。
マルチ商法を始めて約5年、私は4つほどのきっかけで辞めたいと思うようになった。
①借金
ビジネス会員どころか愛用者会員も一向にできなかった私は、もちろん収入ゼロ。
完全な赤字状態で、私生活にまで影響があった。
反対する母から逃げるため、マルチ商法を始めてしばらくしてから、私は一人暮らしをしていた。
マルチでの給料はゼロのため、本業の給料日前は 残金が数百円、もやしと100gのひき肉、激安カップラーメンで飢えをしのいだこともあった。
掛かっていた費用は
毎月の定期購入(収入を得るための絶対条件)
製品の買い込み
勧誘時の交通費、お茶、食事代
化粧品販促のためのエステ資格取得&化粧品買い込み
毎月のセミナーイベント参加費
海外イベント参加費 など
貯金を全額使い果たし、「成功すればすぐ返せる!」とリボ払いやキャッシングを繰り返し、借金は約150万円になっていた。
貯金分も考えると、約250万円ほどマルチに費やしていた。(当時の私に、バカ者!と一喝したい)
断ればいいのに、と普通なら考えるが、以下の理由が散財に拍車をかけた。
②先輩会員からの圧力や誘導への疑念
マルチ界隈では、新製品が出ると、サンプル分や小売り分として、余分に購入するのが定番となっている。
「U社のものだから間違いない!」と、試したわけでもないのに、製品を10個以上爆買いする人も。
私が購入をためらっていると、先輩会員から
「これからできるメンバーの分も買っておいてあげないと。今回の新製品は、成功のためのチケットなんだから。」
と言われた。
他にも、
仕事を理由にセミナーやイベントに参加できないと伝えると、
「体調悪いとか、身内が、とか言えばいい。それで休ませてくれない会社なんか辞めたら?」
海外イベントへ行くのにお金がないと言うと、
「イベント参加は先行投資。成功すれば取り返せる。できる方向から考えないと」
などと言われた。
ちょっとやめておこうと思っても、製品を余分に買うことも、イベントへの参加も
「成功のために必要」とあの手この手で諭される。
当時洗脳どっぷりだった私は、迷った末にセミナーやイベントに参加し続けた。
このときの職場はパワハラばかり受けていた私がやっとの思いでたどり着いた雰囲気の良い職場で、休んで迷惑をかけるのは非常に心苦しく、本当にこれで良いのか常に疑問だった。
今思い出しても周りの無責任な言葉が腹立たしいが、それよりもその言葉を鵜呑みにして
お金を出した自分が一番腹立たしい。
③紹介者の変化
エミカは、私を勧誘し登録させたときは
「自分も輝けて友達も輝かせてあげられる、私の天職だ!結婚しても続ける!」
と言っていた。
しかし、結婚・出産して、
「私は結婚することが夢で、もう叶っちゃったからお手伝いに回るね」
とあっさり言われ、冷めてしまった。
④弟の内定先から調査
私の弟の就職が決まった際、内定先から
「あなたは、マルチ商法をしていませんね?また、身内でマルチ商法をやっている人はいませんね?」
と確認されたという。
最初、それを母から聞き
「母が私を辞めさせたくて嘘をついているんだ」
と思っていたが、後に弟に確認してみると事実だった。
いずれバレて、弟が退職させられたら申し訳ないと思ったことも、辞める理由の1つとなった。
辞めた後
借金を任意整理し、その後結婚した夫と両親の協力もあり何とか返済。
最近は出産もした。
短期間ではあったが、不妊治療も経験。
マルチ時代に「このサプリメントで体を綺麗にしておけば、不妊も無縁!」と言われていたけど…。
マルチをやっている間は、
「市販の食品や化粧品には添加物や化学物質がてんこもり」「薬やワクチンは毒」「毒素が身体にたまって病気になる」などと教育され、
「でもU社のサプリを飲んでいれば大丈夫!」と誘導されてきた。
今でも当時の言葉が忘れられず、病気になるのでは、と怖くなることがある。
また、疎遠になった友人のことが心に引っ掛かっている。
辞めたことを伝え謝りたくて久しぶりに食事に誘うも、既読が一向につかず、返信も来ることはなかった。
他にも数人、そのような状態の友人がいる。
辞めて良かったと思えていること
辞めてよかったと思えることは2つ。
1つ目は、友人との食事や人が集まるイベントで、考えすぎずありのままで楽しめていること。
マルチ時代は、「勧誘しなくちゃ」「成功しているように見られなきゃ」と、心から楽しめずにいたから。
2つ目は、普通に家庭をもって普通に暮らせている。
自分のことを信じてやり直すチャンスをくれた夫と、愛する子供と、上手くいかないこともあるけど、たくさん笑って暮らせている。
両親にも金銭面で迷惑をかけているが、念願の孫の顔を見せられたことで非常に喜んでくれているので、そこは良かったと思う。
いま思うこと
最初は、マルチ商法をやっていたことや、借金を背負ったことを誰にも言いたくありませんでした。
しかし私が発信することで、かつての私のような、辞めたくても辞められない会員の方や、身近な人がはまっていて困っている方のヒントに少しでもなれば良いなと思い、失敗談などを綴って公開していくことにしました。(ブログ)
今回この「マルチ被害をなくす会」のサイトを知り、
身内がマルチ商法にはまっている方の事例を読み、心苦しかったです。
私も周りにこう思わせていたんだろうなと、改めて深く反省しました。
身内や友人、パートナーがマルチにハマって困っている方は、とても苦しい思いをされていて、マルチ商法に大切な人を引き込んだ人たちや会社が憎いと思います。
しかし、元会員として言いたいのは、決して頭ごなしに怒ったり否定したりせず、愛を伝え続けて欲しいなと思います。
なかなか難しいことですが、私はそれで戻ってこれたのが大きいと感じているからです。
今、マルチ商法をやっていて「このままでいいのか?」と迷われている方は、アップやリーダーから何と言われても一旦立ち止まって考えて欲しい。
マルチ商法は、貯金を切り崩したり借金をしてまで、挑むものではないと思います。
話だけでは簡単そうに、できそうに、感じるかもしれませんが、実際にやってみるとそうはいきません。
私の体験談が、何らかの形で誰かの役に立つことを祈って終わります。
インタビュー後語りたくなったこと - 1
※インタビュー後に語りたくなった内容をまとめていただきましたので、ブログより抜粋して転載させていただきます。
私がマルチ商法をやっていたとき、特に母親は大反対していました。
顔を合わせれば
母「マルチやめろ!」
みる「マルチじゃない!うるさい!」
と喧嘩していました。
(いやマルチなんだけどね)
マルチ商法を辞めた後、両親との現在の関係は、修復しておおむね良好です。
夫の転勤で地方に離れて暮らしていますが、正月など連休は帰省し、
LINEでほぼ毎日連絡を取り合っています。
そして、今年の正月の帰省と同時に里帰り出産をしました。
里帰り中、両親といろんなことを話しました。
もちろんマルチ商法にハマっていたときの話も。
当時の話を思い出しているうちに、私は泣いてしまい
「自分の子供にはこんな思いはしてほしくない、守りたい」
と、母につぶやきました。
母は
「みるの夫くんと、両家のおじいちゃんおばあちゃんと、子供をみんなで守っていこうね」と言ってくれました。
子供ができて、子供を大切に、愛おしく思うたびに、
私の両親の気持ちも振り返って考えるようになりました。
両親はマルチ商法にハマって、借金までしてしまったみじめな私を見て、
ショックだったし悔しかっただろうな。と。
実際に母からは「関係者たちを訴えられないのかね~」と言われました。
訴えたい気持ちはあっても、私が合意の上でお金を出してしまったので実行しませんが。
仮に、私の子供が同じ状況になったら私は
「紹介者とアップ連れてこいや!」と言うと思います。
もちろん、そんなことにならないように教育していきます。
父は、里帰り後自宅に戻るときに
「自分の力でどうしても乗り越えられないことが何かあったら、いつでも頼ってね。」
と言ってくれました。
インタビュー後語りたくなったこと - 2
里帰り中、母から言われたことで、印象深い言葉があります。
「親不孝でごめん、て、みるはよく言うけどさ。親孝行って3歳までに全て完了するんだよ。私とお父さんは、とても幸せにしてもらったよ。」
マルチ商法をやっていた頃は、
芸能人やYouTuberが
「親に家を買ってあげた」「高級料理店の食事に招待した」などと話すのを見て、
「私も成功したら両親に認めてもらって、親に大きなお金を出さないとできないことをしてあげよう!」と考えていました。
セミナーでも「権利収入でたくさん稼いで、親孝行!」と言われていました。
マルチ商法を辞めてからは、
「家を買った芸能人はなんて親孝行なんだろう。
それに比べて私は、親にお金を返していくべきなのに、まだまだ助けてもらって情けない…」
と思っていました。
でも、母の言葉を聞いて、生まれてきてここまで育ってきた時点で、
それも親孝行なんだなと、許してもらえたような気になりました。
自宅に帰った後、母には里帰り出産のお礼もかねて
「子供が生まれて、自分がいかに心配をかけたかがわかった。本当にごめんなさい。そしてありがとう。」
と、当時の反省を手紙に書き、改めて謝りました。
そうは言っても時々、激しい後悔の波が襲ってきます。
マルチ商法に出逢う前も、死にたい死にたいと言っていましたが、
失敗後も情けなさすぎて死んでしまおうかと考えたこともありました。
でも今はとにかく、子供をしっかり育てて
また両親に会わせてあげることが、私にできる新たな親孝行かなと思っています。
もちろん、甘い話にはのらないように。
特にマルチ商法は、もう耐性つきまくりなので、絶対やりませんし商品も買いませんけどね!!!
大切な方、特に家族がマルチ商法にハマっていて困っている方々に、
こんな未来がきっときますよ、と知っていただき希望になることを祈って今回は終わります。
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